医療コラム

薬のおはなし・なんのために飲む?

町広報「まつまえ」22年7月号掲載

「薬のおはなし・なんのために飲む?続編」                    

みなさん こんにちは! 夏目です。先月に引き続き、薬のお話です。        

③病気を治す薬
この手の薬の代表選手は「抗生物質」と言われる細菌(ばい菌)をやっつける薬と、「抗ウイルス薬」といわれるウイルスをやっつける薬でしょうか。            

「抗生物質」は、膀胱炎や腎盂炎、肺炎などで使われることが多く、この薬を飲んだことがある方も多いと思います。これらの病気の多くは細菌(ばい菌)によって引き起こされるので、細菌を殺す治療をすれば病気が治る、というわけですね。抗生物質というのは1940年に「ペニシリン」として世に登場し、その後様々な種類が発見、開発され、それまでは死亡原因のトップであった感染症(肺炎や敗血症、結核など)が激減しました。

抗生物質が使われるようになり、「感染症は無くなる」と期待され、やたらに使われた時代がありました。そのためか、ペニシリンが効かない細菌(これを耐性菌といいます)が現れ、新しい薬が開発され・・・最近では効く抗生剤がほとんどない「スーパー耐性菌」が出現し、高度な医療を行う施設では広がりを恐れています。               
「抗ウイルス薬」もウイルスに作用して治療しよう、というものです。ウイルスによる病気は、カゼや嘔吐下痢、おたふく、インフルエンザなど色々ですが、抗ウイルス薬があるものは意外と少なく、よく使われるのはインフルエンザと、他に数種類しかありません。その中でダントツに使われているのがインフルエンザの薬です。                      
でも、普段健康な人にとっては薬を飲まなくても治る病気で、飲むことによって熱の期間は短くなるのですが、脳症や肺炎などの合併症や死亡が減るのか、については、はっきりしていないのです。薬が効かない耐性ウイルスも報告されており、むやみに使うべきではないのかもしれません。              

ちなみに、世界人口の2%弱の日本が、世界中で生産されるインフルエンザの薬の七割以上を消費しているようです。
私たちは薬に頼りすぎなのかもしれませんね。

内科医長 夏目 寿彦