医療コラム

空想と妄想(もうそう) 

町広報「まつまえ」19年12月号掲載

みなさんお元気でいらっしゃいますか? 私はとっても元気です! 畑も終わり、いまは出勤前の散歩を楽しんでいます。午前7時前後にカメラを持った怪しいおじさんが大磯・弁天・建石付近を歩いていたらそれは私です。どうぞお声がけ下さい。

最近ときどき、タレントのインタビュー記事などを読んでいると「趣味は妄想(もうそう)です」などというのを見かけます。ええ? ホントですかネ。

木村「オオイソさん、ご趣味はなにかおありですか?」
オオイソ「趣味? なんもねえエンタなぁ。畑サ行くぐらいダ。先生、うちのババ、最近おかしいエンタな。『物がなくなっている』『物が盗まれた』ってしょっちゅうしゃべって。だれもそんなことしてねえってしゃべっても『いや絶対そうだ』ってしゃべってきかねくて困る。」

妄想というのは「誤った思い込みで、かつ修正不可能なもの」をいいます。上記のように、明らかに間違ったことを思い込んでいて、どうやっても説得できないのは妄想です。
例えば「うちの嫁が私の銀行口座から勝手に預金を引き出している」、「誰かが私をねらっている」などなど。
妄想の内容は、本人には非常に現実味を帯びていて全く事実に思えることなので、説得しても無駄です。そういう人には医師にかかってもらうほうがいいでしょうネ。
でも「お前がおかしいから医者サ連れでく」といっても行くわけがありません。そこを何とか工夫して、『盗まれて精神的に参ってるんだから医者に診てもらおう』ぐらいの言い方がいいのかもしれません。

妄想はいろんな場合に起こります。認知症(ボケ)のある人、うつ病の方のごく一部、統合失調症の方など。妄想はしたくてするものではなく、思えてしまうことなのです。趣味が妄想だなんて、あり得ませんネ!

一方、空想というのは、「ああ、毎日美女に囲まれてちやほやされたら楽しいだろうなぁ」などと、実際にはありそうにないことを頭の中で想像することをいいます(注 私は毎日病院の美男美女(患者さまや職員)にチヤホヤされて楽しく過ごさせていただいております)。
空想は心の中でひそかに楽しむ場合はどうやら悪いものではないようです。「ああ、宝くじで3億円当たったら病院に寄付して赤字を減らして・・・」とか「ああ、船を一艘持っていたら好きなときに離島小島に行って過ごすのになぁ」とか。

皆さんも健全な空想を楽しんでみてはいかが? ではまた来月。

院長 木村 眞司