医師不足について
皆さんこんにちは。町立松前病院の八木田です。前回に引き続き「診察室から情報発信」(その4)と題しまして、また少し述べさせて頂きます。
今回は、特にここ1~2年で話題となっております「医師不足」についてです。この医師不足に関連したものとして「地域医療崩壊の危機」「立ち去り型サボタージュ」「コンビニ受診が招く医療崩壊」などの表現でもたくさんマスメディアに取り沙汰されています。
この医師不足の要因としてさまざまな議論がなされておりますが、よく取り上げられるものとしては、新卒医師臨床研修制度の義務化による指導医不足からの派遣医師の引き揚げ(大学病院から自治体病院への派遣医師減少 )、医師の偏在(医師が都市部に集中する地域による偏在、産婦人科医・小児科医不足などの診療科目による偏在)、絶対的な医師不足(国際比較から)、病院中核医師の過重労働と医療訴訟増加のストレス等による離職、研修医の研修病院選択条件の変化(高度医療化、都市化)などがあります。
統計学的に医師不足を分析してみますと、医師数に関してはよく人口10万人あたり医師○○人という表現が行われますが、2004年の統計ですと日本は約211人で、北海道も同程度の約216人となっています。ただ、北海道の場合は、上川中部(299人)・札幌(266人)・西胆振(236人)に多く、根室(100人)・日高(106人)・宗谷(119人)に少ないという地域による偏在が顕著となっております(函館市を含む南渡島の場合は約206人)。また、絶対的な医師不足ということに関しては、国際比較では人口1000人あたりの医師数という指標が用いられますが、2005年の統計では日本2.0人に対してギリシャ4.9人、フランス・ドイツ3.4人、英国・米国2.4人であり、かつOECD(経済開発協力機構)加盟国平均3.0人ということでもあり、これらの数値が日本の絶対的医師不足という根拠となっているようです。
ちなみにですが、松前町の人口で単純計算してみますと、人口1000人あたり医師2.0人という日本の平均を確保するためには松前町内に約19人の医師が必要ということになりますでしょうか。