医療コラム

物忘れ その2 

町広報「まつまえ」18年11月号掲載

さて、ちょっとしたことが思い出せないことは誰しもあることなわけですが、どこからが「異常」なんでしょう?

「先生、うちのおばあちゃんは昔のことはよく思い出せるんですけど、最近のことはすぐ忘れてしまうんですよ。」とよくいわれます。 昔のことというのは「長期記憶」でして、これはなかなか忘れません。一方、最近のことは「短期記憶」や「超短期記憶」によって担われます。 短期記憶を試す簡単な質問は、「今日は何年何月何日?」というもの。普通は1日ぐらいの誤差で答えられるはず。

ボケは昔は痴呆症【ちほうしょう】といいましたが、今は「認知症【にんちしょう】」といいます。
認知症では最近のことから覚えられなくなっていくことが多いんです。  では、どこまでが普通でどこからが「認知症」なのでしょうか?

普通の「物忘れ」は社会生活や日常生活に支障のないものをいい、「認知症」はそれらに支障をきたすものをいいます。 その中間は「軽度認知機能障害【けいどにんちきのうしょうがい】」といいます。
認知症を起こす病気にもいろいろあり、一番多いのがアルツハイマー病です。 徐々に記憶が衰えていきます。一方、脳卒中(脳梗塞と脳出血の総称)のあと認知症になる人もいます。
では、どのような人が医療機関にかかればよいのでしょうか。
(ア)物忘れがだんだんひどくなっていくとき
(イ)物忘れが日常生活・社会生活に支障を及ぼしているとき (→今までできた作業ができないとか、仕事がとんちんかんになっていて周りが「どうしたんだ?」といっている、等々)
(ウ)物忘れ以外に「問題行動」や「精神症状」があるとき。問題行動とは、夜と昼が逆転している、暴力をふるう、など。 精神症状とは、気分が沈むとか、被害妄想【ひがいもうそう】がある(自分のもの取られたと信じ込んでいて説得不可能、など)など。

どこにかかればいいでしょうか? とりあえず町立病院の内科で構いません。 当院で大丈夫なものは当院で拝見しますし、必要があれば専門家にご紹介します。  アルツハイマー病の薬にはめざましい効果はありません。記憶の衰えを半年先に延ばすぐらいです。 むしろ大切なのは、今後の生活設計や問題行動への対処、精神症状の改善です。いろいろとご相談しましょう! ではまた。

院長 木村 眞司