医療コラム

『最後の時』を考える

町広報「まつまえ」22年10月号掲載

みなさん こんにちは。 松前病院の夏目です! もう10月になりました。日はだんだん短くなり、肌寒くなってきましたね。カゼなどひかないよう、体調に気をつけてくださいね!

ところで、今日のテーマは「最後の時」を考える、です。「死ぬ時のことを考えるなんて縁起でもない」と声が聞こえてきそうですね。でも、人は必ず死を迎えます。高齢になってからの死は、子供が生まれるのと同じように自然なことだと思います。
一昔前までは、死は日常にあり、看取ることを人は自然に学んでいました。私の祖母は今から四十年ほど前に八十歳で亡くなりましたが、病院へ連れてくということもせず、町の開業医が往診し、点滴もせず、家族と近所の人に囲まれて息を引き取りました。「この息になるともうすぐだ」「これが最後に出る宿便だ、もう肛門が開いてるんだ」と解説する人がいました。息が止まってもだれも驚きません。医者を呼ぶわけでもありません。子供ながらその場面は私の脳裏に焼きついています。
今から考えると、点滴をすればかなり長く生きたでしょうし、一時は元気になったかもしれません。でも、とても自然で幸せな人生の終わりだったと思います。死にゆく過程をみんなで見守り、そして看取りを学ぶ。一昔前までは、看取りは医療の役割ではなかったのですね。
いまはそんな時代ではない、といえばそうかもしれません。でも私は、自分たちの親をできれば同じように看取りたい、と密かに考えています。また、いつの日か、自分もそんな最後を迎えたいと思います。
皆さんはどのように看取りたいですか、看取られたいですか。
最後の旅立ちを見守ることも、私たちの病院の役割でもあります。

松前町立松前病院は、より信頼され、愛される病院を目指しています。

内科医長 夏目 寿彦